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木材SCM / Timber SCM -19- (雑誌掲載分)

木材SCMについて木材情報2004年12月号掲載の際の
原稿を載せます。計算過程は名前を記していませんが
DBRRについてとなっています。本blogではこれから
ご紹介する部分も入っています。
なお、本稿でのフォレスター効果はブルウィップ効果
ことを言っています。
(見比べていないので掲載内容と若干異なるかもしれません。
手元の提出原稿を載せました)

*****

地域木材産業の総合的管理

木材サプライチェーンマネジメントの視点から −




はじめに

 従来より、林業・木材業界には、地域材の保育・伐出・製材・加工・建築までの多様な工程を一貫した仕組みの中で考え、それぞれの工程(業種)間のつながりを良くしようとする「流域管理システム」という発想がありました。その構想のもとで、地域ごとに、地域材の各工程を受け持つ多数の業種が集まる協力者会議といったものが組織されましたが、ときどき会合を持って協力姿勢を確認する以外には、ほとんど実効のある機能を生み出して来なかったように思われます。その原因は、各工程を担う業者間の経営状況と経営意識の多様性を克服できなかったところにあると思われます。
 そこで、次の手段として大型の木材加工施設を備えた総合的な木材加工・流通基地(いわゆる木材コンビナート)づくりが進められ、複数の製材・加工・流通部門を一つの経営体として機能させる政策が実施されてきました。この木材加工・流通基地がうまく機能すれば、地域材の生産工程は、林家 → 素材生産業者 → 木材加工・流通基地 → 木材問屋・建築業者、という流れに整理され、地域の林業・木材業全体の振興につながると期待されております。そのためには、木材加工・流通基地における複数の加工施設が無理なく、無駄なく、有効に機能する必要があります。
 私どもはこのような視点から、新潟県山北町に造成された木材コンビナート「スギトピア岩船」における生産計画のあり方を検討してきました。その際にヒントになった方法が、サプライチェーンマネジメント(SCM)という考え方です。本稿は、SCMの視点から「スギトピア岩船」をモデルとして検討した結果に基づいて、地域材の生産・加工・流通工程の総合的な管理について考察したものです。

1. サプライチェーンマネジメント ( SCM )

 (1)サプライチェーンマネジメント ( SCM ) の目的
 今の日本では多くの分野の製品市場は製品供給過多の傾向にあり、製造業は厳しい競争状態におかれ、過度ともいえるほど市場への適応をせまられています。このような状況において生産工程の管理と在庫量の管理をひとまとめにして計画立案を行なおうとする考え方が、サプライチェーンマネジメント ( SCM )と呼ばれるものです。SCMの対象は企業内のみにとどまらず、企業間をまたいで考えることもあります。この視点でみると、製品市場での競争はサプライチェーンとサプライチェーンの競争であるとも考えられます。
 SCMの要点は、以下3点にまとめられます。
① 消費者需要に焦点をあてた生産計画にすること、
② 各部門のメリット・デメリットを共有すること、
③ 材料と製品の流通経路を一体としてとらえることです。
 ① は、最終製品の需要変動に対応した生産を行うという意味です。② は、サプライチェーン内で、ある部門は利益を上げているのに、ある部門は損失を出している状況を避けるということです。③ は、原料の調達、製品の生産、製品の販売に至るまでの一連の流れ全体の最適化を考慮して管理することを説明しています。生産管理・在庫管理を一括して行なうという目的自体にそれほど革新的な点はありませんが、SCMはこれまでの個別的な生産管理・在庫管理の考えに比べ、明確でかつ簡潔な指標を提示します。
 (2) フォレスター効果
 SCMの中心的なテーマにフォレスター効果といわれるものがあります。フォレスター効果というのは、川下側の需要の変動が川上側の段階にいくほど大きな変動を引き起こす現象のことです。このため、各工程ではそれより川下側の工程からの要求量の変動を吸収するために在庫量を増やす必要が生じますが、このような在庫が各工程に貯まることは生産工程全体にとって大きな無駄となり経費の負担になります。そこでSCMでは、川下側の工程からの変動を伴う要求に対して欠品を生じないようにしながら、各工程での在庫をできるだけ少量に抑えることが生産工程全体としての収益性を高めるという考えに立ちます。その効果を具体的に示すために、SCMでは最終製品が売れた時点で収入をカウントするという会計方式を採用し、在庫がいくらあってもプラス要因とは見なさず、むしろ在庫は資金繰りを悪化させるマイナス要因と考えます。
 フォレスター効果への具体的な対策としては、主に以下の3点が挙げられます。
① 生産計画の立案間隔を短くすること、
② 最終製品の販売情報を川上側も共有すること、
③ 川上から川下にいたるまでの流通段階を少なくすることです。
 ①は、生産量や在庫量を見直す機会を増やすことにより、各工程に生ずる変動の幅を小さくするということを言っています。②は、最終製品の販売状況を、中間の段階を含め川上側まで速やかに伝達することにより、末端の販売状況に見合わない在庫を各段階で発生させないということを意味します。③は、サプライチェーン内の在庫拠点の数を減らすことにより、変動の発生か所を減らすことを説明しています。
 (3)スケジューリング
 生産工程におけるスケジューリングというのは、最終製品に求められる納期に間に合うように各工程での生産を行うためには、いつ・どこで・だれが・どの作業をするかという生産計画を作成するということです。SCMにおけるスケジューリング手法として、多くの場合、制約条件の理論 ( TOC )が採用されます。制約条件というのは、製品の生産にあたり、その速度を低下させる最大の原因になっている工程のことを意味します。
 TOCに基づくスケジューリング手法では、制約条件とされる工程の生産速度と生産システム全体の生産速度が等しくなるように努力します。その際、生産システムへの原料の投入速度も制約条件の生産速度と等しくします。また制約条件となる工程直前の半製品の在庫は多くしておき、材料不足によって制約条件の工程の速度がさらに低下することを防ぎます。この在庫を保護バッファといいます。さらに最終製品に対する需要の変動に対して欠品を避けるために最終製品の在庫も多くします。この在庫を出荷バッファといいます。これらのことを実行することによって、生産工程全体での在庫量を最小にした上で、最終製品が消費者需要に対して適切に対応できるとされます。

2. 木材SCM

 (1) 木材生産におけるSCMの必要性と特徴
 地域材を原材料とする地域木材産業も、国外材や地域外材との厳しい競争の中にあり、市場への適応を迫られています。総合的な木材加工・流通基地は、剥皮、製材、乾燥、集成材加工、木工品などの工程(部門)をもつ総合加工施設と考えられます。これらの工程を一つの経営として有効に機能させるためには、工程間の木材の流れを全体的な観点からコントロールすることが必要です。しかし、既存の購入者(需要)の変動する要求を満たしつつ、かつ新しい購入者(需要)を開拓し、それを取り込みながら生産の拡大を図っていくためには、経営責任者の経験的なカンや観察力に頼るやり方では限界が来ると思われます。総合加工施設で生産の拡大が実現したときにはSCMに基づく生産計画の方法を導入することが有効になると考えられます。
 また地域材を対象とする総合加工施設では、工程全体がうまく機能することが地域材生産の安定化と拡大に結びつくことが期待されています。一般の企業におけるSCMの取り組みでは、フォレスター効果の軽減による生産工程内の変動緩和が主要な検討課題であり、工程外にある原料供給部門は対象になりません。そこで、地域材を原材料とする木材産業向けのSCM では、地域材供給の安定化と拡大を目標とする項目を加えることが必要であり、この部分に一般企業の生産計画との違いが生じます。そこで、本稿で紹介する木材生産計画のためのSCMを「木材SCM」と呼ぶことにします。 
 (2) 木材SCMの目標と使用する情報
 木材SCMでは以下の3つの目標をバランスよく達成することを目標とします。
① 原木に対する需要の安定化と将来の拡大を指向すること、
② 各工程における在庫量をできるだけ減らすこと、
③ 最終需要に対して供給不足をできるだけ発生させないことです。
 木材SCMにおける具体的な生産計画立案の要領は以下の通りです。需要変動から平均需要と需要のバラツキをもとめ、原木と製品の在庫目標値を設定します。そして平均需要を利益指標(ROI:利益/在庫)で調整し原木集荷計画量をもとめます。なおROIの分母に示された在庫とは、チェーン内全在庫の原木換算値です。在庫が多いとROIは低くなり、原木集荷計画量は少なくなります。原木原木在庫量が原木在庫目標値に満たないとき原木集荷計画量を増やします。製品生産計画量は平均需要に準ずるとし、製品在庫量が製品在庫目標値に満たないとき製品生産計画量を増やします。製品在庫期間が長い場合を過剰在庫状況ととらえ製品生産計画量を平均需要よりも減らします。原木集荷計画量を在庫量にもとづいてもとめるとフォレスター効果の影響を受けますが、木材SCMでは平均需要と利益指標(ROI:利益/在庫)にもとづくため、需要変動よりも安定化させることができます。

3. 木材SCMのシミュレーション

 新潟県山北町に位置する「スギトピア岩船」は、情報化を進展させて木材生産を行なっている木材コンビナートです。その工程は以下の通りです。原木は剥皮施設(図−1)を経由して製材工場(図−2)に運ばれます。製材工場から出る製材品は人工乾燥機(図−3)で1週間乾燥後、修正挽き工場(図−4)を経て製品ストックヤードに運ばれ製品として販売されるものと、ラミナとして集成材工場に運ばれるものに分かれます。集成材工場でラミナから加工された集成材は製品ストックヤードに運ばれて販売されるものと、木工加工工場に運ばれるものに分かれます。木工加工工場に運ばれた集成材はドアや窓枠等の木工加工品へと加工されます。以上の工程により製材品・集成材・木工加工品の3種に大別できる加工済製品は、速やかに出荷されるか製品ストックヤードに運ばれて在庫されます。なおスギトピアの制約条件は人工乾燥機の在庫能力です。



timberscmfig1


図-1 剥皮工程 : 集荷後原木の剥皮・採寸・仕分けの自動処理



timberscmfig2


図-2 製材工程 : 剥皮後原木の製材・仕分けの自動処理



timberscmfig3


図-3 乾燥工程 : おが粉を燃料とするボイラー熱を利用



timberscmfig4


図-4 修正挽き工程 : 4面モルダー仕上げにより製品の高精度を実現


 図-5は、スギトピア岩船の日別製品出荷実績2年間分を週単位に集計し2年分の需要として用いた木材SCMのシミュレーション結果です。ここで提案した木材SCMでは、原木調達から製品販売までの工程に対してSCMを適用し、TOCによるスケジューリングを採用することによって、最終需要を満たしながらフォレスター効果を抑制し、原木の在庫を最小限に抑えることを目指しています。
 図-5を見ますと、原木集荷量の変動は一部に突出した個所も見られますが全体としては製品販売量の変動よりも小さくなっており、木材SCMが原木に対する需要の安定化に効果をもたらすことが示されたといえます。



timberscmfig5


図-5 スギトピア岩船をモデルとした木材SCMのシミュレーション



おわりに
 
 図-5をみても目標とした原木集荷量の安定化が十分に達成されているとはいえず、私達の木材SCMにはまだ不十分な点があります。しかし木材SCMの対象を木材加工・流通基地から拡張し、素材生産から加工工程および製品販売にいたるまで地域木材産業の全工程に適用できれば、地域木材資源の活用を図る道が開かれることが期待されます。
 一般の製造業と同様に、国内木材産業もコスト削減のための規模拡大に邁進している様にみえますが、地域木材資源を活用した地域木材産業にはそれとは別の可能性があるように思います。SCMは、経営者に対して基本的で明快な指針を与えます。筆者らは、地域木材産業がSCMの考え方を取り入れることによって産業内の透明性と一体感を確保しつつ、消費者との信頼関係も強化できるのではないかと考えています。このことはまた、「流域管理システム」実現への一つの方法の提案でもあります。

 本研究に対して、新潟県北部木材加工協同組合から多くの経営情報の提供を受けました。ここに厚くお礼申し上げます。
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