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日本復興を祈念して1  国家事業報告書 2011 


先日発行の新生産システムに関する報告書に
載せた内容です(第一人者の先生と連名)。


日本復興を祈念して本blogにも載せます。
このエントリーが何かしら復興への
貢献となれば幸いです。



*****


林業・木材業界におけるSCMの構築と今後の可能性        


1.SCMとは
 Supply Chain Management (SCM)の要点は最終消費者に焦点をあてること、メリット・デメリットを共有すること、そして一体としてみることである(Persson, 1997)。木材生産活動におきかえると、製品需要を起点に木材生産活動をさかのぼる方向の需要の経路(以下、需要経路)を想定すること、経路間に連なる経営体が個々の効率よりも経路上の需要への対応を優先すること、経路上の全ての需要の最大化をねらうことである。
 より具体的に述べると、SCMは原料調達・製品生産・製品販売を一連の流れとして管理する考え方である。この原料調達・製品生産・製品販売を製材工場における木材の流れによみかえると、原木調達・製品生産(一例として [製材→人工乾燥→養生→修正挽き→結束] )・製品出荷の一連の流れとなる。製材工場内での木材の流れに加え川上に位置する素材生産業者や川下のプレカット工場などでの流れを含めると木材の流れには多くの工程、長い移動距離、そしてそれらに加え人工乾燥工程と養生の長期にわたる生産期間をともなう。そのため、個々の経営体の個々の工程における効率の追求は、圏域全体としての利益の最大化に対する効率をはばみかねず、山元への資金還元の遅延や解消をまねきかねない。例えば、素材生産業者が最適な伐採時期に効率の良い伐採をした原木を市場に出荷をしているだけでは、需要の少ない時期に原木は販売されず原木市場は過剰在庫となり、需要の多い時期に販売機会喪失すなわち他地域の原木が不必要に圏域に流れてくる。製材工場が製材機の生産効率指向で製材を行うと、需要に応じた製材量ではないので製品と仕掛品が製材工場にあふれ資金繰りを困難にする。このように木材生産活動における経営は需要と切り離して考えることができないため、工程における効率が経営における効率を害しかねない場合がある。よって需要経路上の経営体間の全ての需要をより多く満たすための生産量と在庫量の管理をおこなうことにより、経路内の利益最大化と結果としての山元還元最大化がもたらされると考えられる。このように圏域内の全体最適を指向することは、SCMにおける一連の流れとして管理する考え方と矛盾なく同一であるといえるため、素材生産から木材販売にいたる一連の木材生産においてもSCMの考え方は有効であると考えられる。
 なお我が国の木材生産では冒頭に述べた3要点に加え通常のSCMでは全く取り上げられてこなかった2点、すなわち山元還元の視点の不可欠と急峻な地形から最も川上側に位置する制約条件となり得る素材生産能力を検討する必要がある。山元は需要の起点からすると最も反対側に位置することで最も遅く利益が伝達されるので、経路上をさかのぼる需要の減少が合算されて山元還元から目減りする。よって目減りを消すために経路上の需要最大化と需要への対応最大化を実践し続けることで、山元還元最大化を導き出せ得ると考えられる。通常のSCMでは企業内ないしは企業間で在庫を削減し資金を増やしたとしてSCMはその導入目的を果たしたとみられる。一方、木材生産におけるSCM (木材SCM)では川下から川上までの全てという通常のSCMにおいて最長経路の利益最大化を手段に位置付け、山元還元最大化という一般のSCMの対象にはありえないところの最も川上の位置の利益最大化を使命としているため、SCMとしての難易度は最高レベルといえる。また製材工場は工程上(乾燥・養生)に必要な期間に応じた仕掛品を在庫し並行して工程に要する期間より先の需要対応に足る量の製品を在庫せねばならない。また資金繰りを考慮しかつ販売機会損失回避をねらうため、製材開始から製品となるまでの工程に関して販売見込みを含めた生産計画立案を要する。木材SCMでは機械化の容易ではない我が国の地形を考慮し、川上側の素材生産業者も制約を持ちうる対象として検討する必要が生ずる。すなわち製材工場の生産計画立案において、原木調達速度(立米/日、週、月などの単位期間)に想定する最高速度を極力低くすることを方針にすえる必要が生ずる。

2.木材産業におけるSCM活用の可能性:一般的なSCMの戦略における問題点
 通常のSCMでは資金増加または資金ショート回避のため在庫低減を戦略の指針におくが、在庫低減による資金増加には在庫量自体を資金に置きかえるのみの量の限界がある。また在庫を過剰に少なくすれば、販売機会喪失につながる。通常の解決策を木材生産活動に読み替えると製品販売時期の販売速度(立米/単位期間)に同期させて原木調達・製材・乾燥や養生を行うことで在庫低減と販売機会喪失の回避を同時に達成することが考えられる。しかし製材工場の製材能力や乾燥能力などが販売速度に応じきれることができなければ納期に間に合わず、販売機会喪失とともに仕掛品の過剰在庫による資金ショートを招きかねない。また調達・生産・販売が滞りなく進捗している状態であっても調達は多いが販売が少ない状態が長期に続くならば支払と回収の関係により資金ショートの可能性が高まる。以上から資金増加のための戦略としての在庫低減には
1. 調達と生産を販売と同期しうる生産と在庫の能力
2. 調達と生産を販売と同期させる生産計画立案能力
3. 支払と回収に関する資金管理能力
以上のハード面(1. )とソフト面(2. 、3. )のいずれも欠かせない。しかし大規模な施設(1. )を用意した上、その管理(2. 、3. )のための市販のソフトウェア導入などの高額な投資は過剰ともいえる。ハードやソフトを準備可能ならば在庫低減を戦略におけばよいが、いずれかもしくは双方に不足があれば資金増加を行い難くなる。そこで在庫低減のみ以外の戦略を選択する必要が生じる。

3.木材産業におけるSCM活用の可能性:製品生産量の意思決定の方向性
 生産システムにおける主な考え方をみるとフォードの流れ作業(1900年代~)、トヨタ生産システム(1940年代~)、制約条件の理論(TOC 1970年代~)のドラム・バッファー・ロープ(DBR)とその簡易版(S-DBR)が挙げられる。フォードではベルトコンベア導入以前から作業台と作業台の間隔を狭めていくことで作業台間での材料の停止時間を短縮し、生産システム内に滞留する時間を少なくしていった。トヨタでは生産計画量にみあった人員配置による生産速度の徹底により作りすぎを回避、すなわち材料の投入から車両完成にいたるまでの経過時間を最短にするようにしている。DBRでは生産システム内に制約を認識した際に、制約箇所と同じ速度で材料を投入することで材料が販売されるまでの時間を最短化させる。受注生産向けのS-DBRは市場に制約を認識した際の手法で、納期から工程に要する期間だけさかのぼって材料を投入するため最高速度で出荷されていく。これらの共通点を製材工場に読み替えると、製材からはじまる乾燥工程などの一連の流れを経たうえで販売されるまでの期間を極力短くすることを指向することであり、在庫低減の指向と本質は変わらない。他の共通点をみるとトヨタ生産システムとTOCとにおいて、安定した量の材料を生産システム内に流すことが挙げられる。具体的にはトヨタ生産システムの平準化とTOCのDBRでの共通点であり、前者は月次の生産計画量を稼働日に均等に振り分けることを指し、後者は生産システム内の制約条件と等しい速度で製材することを指す。これらには
1. 販売量に対する生産能力の低減 (業務費用削減)
2. 過剰な製品生産を回避 (在庫低減)
という効果を期待できる。なお平準化とDBRの共通点を拡張すると
1. 月によって変動することなく安定した生産量
2. 生産システム内に制約条件がなくとも安定した生産量
以上2点を想定できる。これらを満たす生産量を計画できれば業務費用削減も在庫低減に並行して常時可能になると考えられる。なお、項1末尾で述べた最高速度を極力低くしなければならない原木調達速度に応じて製品を生産するためにも、安定した生産量は適しているといえよう。

4.木材産業におけるSCM活用の可能性:利益継続戦略の提案
 資金の流出回避(業務費用削減)と転換回避(在庫低減)は生産量の安定化により可能と示されたが、資金を実質的に増加させること、そして増加させ続けることへの接近に関しては何ら手がかりは得られていない。すなわち、既存の戦略では資金増加を目的に据えながらも資金を直接増加させうる手段が皆無であったといえる。ゆえに、業務費用削減と在庫低減を損なわずにさらに資金増加を効果として狙える戦略を提案し、地域の木材生産活動に適用すれば、キャッシュは滞りなくかつ以前より多く川下から川上へ流れて山元に還元されると期待できる。資金を直接増加させるためには、回収と支払の差である利益を指標に採用し、利益が正を示し続ければよいことになる。回収は製品販売によるものとし、支払は原木調達と製材工場運営にかかる業務費用によるものとする。また資金ショート回避を考慮すると利益は月別に正を示すことが望ましく、そのような効果をねらう戦略を利益継続戦略とする。ここまでで明らかなように利益継続戦略の実行に最適な手法は未知であるが、ここで、利益の計算に用いる回収と支払の組み合わせのうち利益を正に導きやすいものを探索することによりそのような手法への接近を試みる。回収と支払のうち、回収は販売に左右されるため利益に結びつく操作を行い難いといえる。支払はほぼ固定といえる業務費用を除いた原木調達に関して、需要予測を参考に変動させるないしは平均的な量を参考に安定化させるなどの操作が選択可能となる。そこで調達量を安定化させることにより回収を安定化させる場合と、変動させる場合のいずれが利益を正にさせやすいかを単純なダイスゲームで検討した。なおここで利益の正にさせやすさを確率で表現し利益実行可能確率とする。検討の結果、利益実行確率には以下3点の特徴が示された。
1. 調達量を安定させた場合は変動させる場合よりも上回る
2. 原木価格に対する製品価格の比を変えても 調達量を安定させた場合の上回り方は変わらない
3. 業務費用が多いと差はあまり生じないが、業務費用が少ないと調達を安定させた場合の
上回り方はより多くなる
以上から、調達量を安定化させることにより利益継続戦略は単純に実行され、業務費用低減への注力がさらに利益を生み出しやすくさせると推察される。なお業務費用低減に関しては原木調達量とともに製品生産量を安定化させることでねらえる。この並行した安定化は、生産システム内に乾燥能力などの制約条件が生じるまで需要が高まることでTOCのDBRの状態と一致する。また需要に対し生産能力に余裕のある場合、販売量の多い部材の生産量を安定化させ、少ない販売量の部材は在庫目標の不足分を補うことや需要予測と在庫量と在庫目標から計算するなどで変動させることが考えられる。なお生産システム内の原木、仕掛品、そして製品、さらにそれらを細分化したうえで在庫目標(平均需要量ないしは需要予測量に対し安全在庫量を加えた値)をもうける際には、顧客と接する位置の安全在庫量を決定し、他の位置の安全在庫量をその1/2の値にセットすることにより、調達を安定化させ在庫を低減し納期を遵守しやすくなる。

5.木材産業におけるSCM活用の可能性:素材生産と原木市場
 圏域の多くの製材工場が利益継続戦略を採用した場合、圏域の原木の需要量は安定化されると期待できる。このことで素材生産業者へのキャッシュの流れは安定化されると考えられる。このとき伐採量を変動させるか安定化させるかは季節性やなにがしかの効率などを考慮した素材生産業者の意思決定に委ねられる。伐採量を変動させる場合は、伐採量の少ない時期にも安定化された原木需要に応えるための原木在庫量が必要となる。利益継続戦略の視点からすると伐採量を安定化させた方が利益の正となる月が増え、制約条件なしにTOCのDBRの状態と一致するため需要量に対する資金増加は最大となる。
 圏域の多くの製材工場が利益継続戦略を採用した場合、原木市場からみると原木需要が安定化されるため安定した量の原木が市場を流れる。このとき、市場を流れる木材の安定した速度の加速からはじまり圏域の製材工場から考えての最高速度の維持が原木市場の役割と考えられる。すなわち、原木調達から製品販売にいたるまでの製材工場内部の木材の流れをより速くするための支援である。例えば、製材工場の製品在庫管理のため電子タグ利用を提案していくなどである。このことは電子タグを原木出荷段階から使用できうることにつながるであろう。また従事者不足の製材工場へ他製材工場の従事者を手配するなど、経営資源の過不足調整など生産量に関わる側面の支援も可能であろう。

6.熊本圏域におけるSCM試行の目的と構築モデルの概要
 SCM試行の目的は、これまで全国的に素材生産業者・原木市場・製材工場の各々の部分最適によって営まれてきた木材生産活動に対し、仮想的な垂直統合を想定することで得られる全体最適の視点すなわち新生産システムのビジョンの実行を、計算過程によってどれほど支援できるかを検証することである。木材生産活動には状況に対する経営者の意思決定とその積み重ねによる独自の手法があるため全てを数値化することはできない。そこで経営者への意思決定支援、特に工場内の木材の流れの可視化に主な役割を想定した。
 SCMの切り口で木材生産に関するソフトウェアなどの既存の取り組みがあるが、住宅建築と製材工場をリンクさせるか製材工場向けのものしかなく、素材生産と製品生産をリンクさせるソフトウェアなどはみあたらない。本モデルも製材工場向けにとどまるが、原木調達に関して材積を安定化させる計算過程を記述してあるという極めて単純ではあるが素材生産業者への配慮を行っている点においてわずかではあるが全体最適への接近となっている。
 現在本モデルは製品50アイテム、原木10種を対象としている。本システムの製品別生産量は、平均需要量を基準値とすることで乾燥・養生後の在庫量の在庫目標値低下分を増量させ、乾燥・養生後の保管期間が許容期間を超過した際に割り引くことで求まる。原木調達量は平均需要量原木換算値に対し会計情報(ROI: 利益/在庫)で調整することで求まる。以上の設定により調達量・生産量は安定化され、項3後半で述べたような安定した生産量と原木調達量の最高速度の低下の両立を可能としている。なお昨年の仮納品の際は乾燥工程を基準に計算単位期間を週単位に設定していたが、現場での使用を前提にした流通コンサルタントの提案により日単位へ仕様変更、3月に納品予定である。

7.熊本圏域におけるSCM効果の検証方法と評価
 効果の検証方法としては、第一に、本モデルに対し経営体から期待をよせられている製品在庫管理における意思決定支援ツールとしての役割を果たせるかの確認である。この点に関しては、上述の通り計算単位期間を週単位から日単位へ変更するにより在庫管理機能を高めていることで対応している。なお生産管理部門に在庫管理機能を持たせることに関して、前項のように在庫の保管期間も変数として生産計画の立案に利用していることから木材SCMでは必要な機能の1つといえよう。第二に、本モデルの目的である原木に対する需要の安定化と将来の拡大を指向すること、各工程における在庫量をできるだけ減らすこと、最終需要に対して供給不足をできるだけ発生させないこと、以上3つが、バランスよく達成できているかの確認である。この点に関しては今後の日別のモデルの使用後にヒアリングによって明らかとなる。なお仮納品時のデモンストレーションにてストックやフロー全般のグラフにより計算機能に対する理解と評価を頂いた。
 本モデル使用における具体的な効果指標としては、以下を挙げることができる。
1. 利益: 回収額-支払額: 回収額-(調達額+業務費用)
2. 調達額の変動係数: 調達額の標準偏差/平均調達額
3. 投下資本利益率(ROI): 利益(1. )/全在庫原木換算額
4. 調達量の変動係数: 調達量の標準偏差/平均調達量
これらは山元還元最大化のためにも利益(1. )がどれほど生み出されているか、生み出しやすさにつながる利益継続戦略の視点から原木調達費の安定はいかほど(2. )か、利益に応ずるべく在庫量は適切か(3. )、原木調達量はならされており原木在庫が工場内の作業効率を圧迫するようなことを未然に防げているか(4. )を示す。

8.木材産業におけるSCM活用の今後の課題
 今後木材SCMでは、素材生産と製品生産をリンクさせうる計算過程の開発が課題として挙げられる。現段階の製材工場の原木調達を安定化させることだけでは素材生産業者への配慮として単純すぎるであろう。素材生産業者からはどのようなSCMを必要とするのか検討が必要である。項1の繰り返しになるが様々な業種を対象にしたSCMの検討をみても最も川上側に制約のある場合の検討はみあたらない。制約に焦点をあてたTOCでも制約は生産システム内か市場にあることを想定するにとどまっている。このようにこれまでの既存のSCMの検討には明らかに視点の欠損があるため林業・木材業界への何らかの手法の適用においては慎重を要する。またこのことは、林業・木材業界が独自にSCMの模索を展開する必要のあることを示している。
 山元まで需要が歪まされずに俊敏に伝達されることを背景にSCMの計画機能は実需に即した立案が可能となる。圏域内の経路の全需要最大化とそれによる山元還元最大化には常時市況を反映した計画立案が欠かせない。そのためには、オンライン受発注による俊敏な売買とその情報管理によって初めて得られる木材と需要の2つの流れの可視化が、圏域の競争力として必須となるため、オンライン受発注に関してハードはいわずもがなであるが木材生産活動に特化させたソフトに対する研究・開発が望まれる。このことで木材SCMの効果がさらに発揮されるであろう。

引用文献
Persson U (1997) A conceptual and empirical examination of the management concept Supply chain management. Licentiate Thesis 1997/29. Luleå University of Technology.



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